本のソムリエ

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『グラビアアイドルの仕事論』 倉持由香

おすすめ度: ★  (3つ星が最高点)

 

グラビアアイドルの倉持由香による芸能界で生き残るための仕事論。

 

彼女がグラドルに関心を持ったのは小学生の時、兄の部屋にあったエッチな雑誌だった。そのころから、恋愛対象は男性なのに、「エロ目線で女体を見る」ようになったという。

中学時代から芸能事務所に所属したものの、なかなか芽がでず、長い間悶々とした日々を送っていた。学校生活では小5から不登校であったり、大学でも一浪、一留、中退とダメ人間に陥りながらも、ようやくグラドルとしてのチャンスをものにする。きっかけはTwitterだった。撮影会で撮った写真よりも、自撮りした写真の方が、Twitterのフォロワーの反応がいいことに気が付き、自撮り写真を次々とアップしていく。彼女が偉いのはその発見を自分だけにとどめなかったことだ。常日頃から芸能界でのグラビアアイドルの地位の低さを嘆いていた彼女は、グラドル業界向上のため「グラドル自画撮り部」のハッシュタグを作り、グラドル仲間と協同してフォロワーを急増させていく。SNSを上手に活用して、ファンを獲得していく過程は企業戦略にも通ずる。

 

彼女が芸能界で生き残ることができたのは、所属事務所やマネージャーにまかせっきりにするのではなく、自分の商品価値を自己発見し、戦略的にセルフ・プロデュースした点にある。大半のグラドルの友人たちは自分の商品価値を見出せず、売れないまま、失意の中で芸能界から去ってしまった。

彼女の場合は、あるカメラマンからの助言を聞き入れ、コンプレックスであった100センチの大きなお尻をあえて強調し人目にさらすことで「尻職人」としての地位を築き上げることに成功した。

 

もうひとつ彼女が優れていた点は、男性目線で自分の商品価値を見極めることができたこと。ポーズの参考書は男性の妄想をかき立てるエロ漫画といいきる。幼いころに兄のエッチな雑誌を見ていたことが功を奏したのだ。パンツの食い込みシワや肉のムチムチ感がでるような写真を自撮りできる、そんな女優やグラドルなんてめったにいない。こうした他の芸能人との徹底的な差別化が、芸能界での確固たる彼女の居場所を作り上げた。

 

本書は、グラビアアイドルを目指している人や芸能界で活躍したいと思っている人はもちろん、一般のビジネス業界でも通用するようなヒントがたくさん詰まっている。「他人が登っている山には登らずニッチな場所をねらう」「人から応援されるためにはストーリー性が必須」「打算的に努力する」との指摘は大いに役立つだろう。