『日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』 近藤慎太郎
おすすめ度: ★★ (3つ星が最高点)
著者は、山王メディカルセンターに勤める内視鏡検査や治療を手掛けてきた専門医。
「日本一まっとうな」との言葉に偽りはない。胃がんや大腸がんなど主ながん10種類を懇切丁寧に説明している。専門的な小難しい説明は特技のマンガによりわかりやすく解説している。
著者が誠実であると思うのは、がん検診によってわかることとわかないこと、治療で治せることと治せないことを忌憚なく述べてくれている点である。
雑誌や一部の医者の中には「がん検診には意味がない」とか「がん検診によってがんの死亡率は下がっていない」など、がん検診の信ぴょう性に異議を唱える人たちが後を絶たない。最終章では、「がん検診懐疑派への反論」として、こうした懐疑派に対して明快な回答をしているので、ぜひ一読してほしい。
著者が本書を執筆する動機にひとつとなったのは、健康格差が拡大していることへの懸念だ。毎年定期的に健康診断を受診している人がいる一方、仕事が忙しいなどの理由でほとんど健康診断を受診しない人がいる。前者は、日ごろから健康に関心をもっているのでより健康になるし、たとえガンが見つかっても早期治療を受けることができる。後者は健康への関心が薄く、ガンが見つかった時には手遅れになるケースが多い。
早い段階で治療を始められるか否かは、生死に決定的な影響を及ぼす。早期発見できれば、医療者間の合意を得やすく、正解の治療法が見つかりやすい。一方、病気が進行すればするほど、状況が複雑になり、医療者間でも意見が対立し、何が正解か見つけづらくなるという。