本のソムリエ

おすすめ本を紹介します

『本を売る技術』矢部潤子

本を売る技術

 

おすすめ度: ★  (3つ星が最高点)

本の雑誌』の杉江由次氏が、36年間、売り場で勤務した矢部潤子氏から、売れる書店を作るための極意をつぶさに聴き取ったインタビュー集。矢部氏は芳林堂書店、パルコブックセンター、リブロ池袋本店など時代をけん引した書店で勤務した経歴をもつ。

 

本の注文と返本、本棚の並べ方、スリップの活用方法、ポスターの貼り方に至るまで、これまで書店員が口伝してきた指南が事細かく語られている。

特に興味深かったのは、平台での本の並べ方。百戦錬磨の書店員の知恵が凝縮され、並べ方いかんによって売れ行きが変わってしまうという。32点の本が並べられる平台があったら、どのような順番で本を置くべきか?ぜひ本書を手にとって、確かめてほしい。

 

出版社やジャンルごとに並べてあるだけに見える本が、書店員による周到な意図、いや商売魂のもとに配置されていることがよくわかる。

これまで私は自分の興味にあわせ自発的に本を手に取っていると思っていたけど、書店員の巧妙な思惑によって本を選んでいたにすぎないのでは?そんな疑念が頭をかすめた。もちろん書店員の仕掛けに乗せられたにせよ、ワン&オンリーといえる新たな本との出会いであったわけで、喜ばしい限りだ。

 

明日から本屋へ行く目が変わる一冊。