本のソムリエ

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『狼の紋章』平井和正

 

狼の紋章【エンブレム】〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)
 

 

おすすめ度: ★★  (3つ星が最高点)

  夜の帰り道、美人教師が暴漢に襲われたが、突如、素性の知れぬ男が現れ彼女を救いだす。

  翌日、彼女が勤める私立中学校に大神明という名の少年が転校してくる。美人教師は彼が自分を暴漢から救ってくれた者だと直感する。

 

  一方、学校を裏で支配する不良少年グループは、得体のしれない不気味さを身にまとった大神を快く思わず、毎日、彼に暴力をふるう。不良少年たちから袋叩きにあいながらも、無抵抗を貫く彼の姿を見て、良心的な生徒たちは大神をカリスマとして祭り上げようとする。

  不良少年たちのリーダー格は暴力団員の父を持つ生来の悪人であった。大神と真剣勝負をすべく美人教師を人質にとり、大神を挑発する。そして、二人の戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

  元々、マンガとして発表されたものを小説化したこともあり、劇画のように物語が起伏に富み、外連味たっぷりの描写はリーダビリティ抜群。ご都合主義も少しも気にならないほど、強力なストーリー展開でぐいぐいと読者を引きずりこむ。娯楽小説のお手本のような作品。

  生賴範義の表紙と挿絵が最大限に物語に花を添えている。