本のソムリエ

おすすめ本を紹介します

『逆ソクラテス』伊坂幸太郎

 

 

 

おすすめ度: ★  (3つ星が最高点)

 伊坂幸太郎は「いかに悪意と対峙するか」というテーマと繰り返し取り組んできた。

強盗や殺人といった巨大な悪意もあるし、偏見や先入観といったささやかな悪意もあるある。本書は後者のささやかだけれど、見過ごすことはできない悪意を扱った短編5つを収録している。

 

 表題作の『逆ソクラテス』はこんな物語。

 久留米という小学校教員は、優秀な生徒とだめな生徒を決めつける男だった。自分が気に入った生徒がテストでいい点を取れば、「さすがよく勉強している」とほめる。一方、だめな生徒がいい点を取っても、「まぐれだろう」と冷やかす。久留米先生の一言によって、クラスでの生徒の評判と地位が確定してしまうのだった。その久留米先生の受け持つクラスに安斎という転校生がやってきた。安斎は、先入観で生徒を判断する久留米先生に一泡ふかせるために、だめな生徒の代表である草壁と数人の友人たちと協力して、思いもよらぬ奇策を次々と実行していくのだった。

 

 柴田錬三郎受賞作。