本のソムリエ

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『行ってはいけない外食』南清貴

 

 

おすすめ度: ★★  (3つ星が最高点)

 

 著者はフードプロデューサーであり、日本オ-ガニックレストラン協会代表理事を務める人物である。外食産業の内情にもっとも精通しているひとりといえる。タイトル通り、「行ってはいけない外食」と「行っていい外食」を指南し、飲食業界の内幕を赤裸々につづっている。

 

 一般人には驚くべき内情が全ページにわたって書かれている。

 たとえば、著者が本書で警告を発している「行ってはいけない外食」の一部は以下のとおり。

 

サラダバーの野菜

揚げ物

軟らかい鶏肉

真っ赤なウィンナー

業務用マヨネーズ

立ち食いそば

ファミレスのハンバーグ

 

 誰もがよく食べている外食ばかりである。

 「食べると危険だったの!」と驚いてしまう食品のオンパレードで、なぜこれらの食品を食べてはいけないのか知りたければぜひ本書を手に取ってほしい。

 

 著者が批判するのは悪徳食品業者ではない。安くて安全な食品を求めようとする、消費者である。著者によると、食品が安いということと安全であるということは相反する条件であるという。食の安さを追求しようとすると、農薬や化学薬品まみれの「安全でない食品」にならざるを得ない。一方、食の安全性を追求しようとすると、人手や手間がかかり、高価な食品にならざるを得ない。

 消費者が安さを求めるのなら危険な食品であっても甘受すべきであるし、安全性を求めるのなら、現在より価格が上がることを受け入れなければならない。にもかかわらず、安くて安全な食品を求めようとする無知な消費者が大半を占めていることにより、「安くて安全な食品」と喧伝する悪徳食品業者がはびこる結果を招いたという。

 

 こうした例のひとつとして霜降り牛肉が挙げられている。

 元々、霜降り牛とは但馬牛特有の肉であり、ごく少量しか取ることができなかった。ところが、多くの消費者が霜降り牛肉を求めた結果、生産者は牛をビタミンA不足することにより人工的に脂肪を形成させ、霜降り牛を大量生産しようと画策した。ところが、ビタミンA不足の牛は病気になりやすいため、餌の中に抗生物質ホルモン剤などを混ぜなければならない。つまり通常売られている霜降り牛肉は、高級な牛肉どころか健康状態の悪い牛肉ということになる。

 高級な肉を安く食べたいという消費者の無理な欲求が、いびつな生産者を生み出してしまった好例といえる。

 

 危ない外食を避け、正しい食のあり方を求める賢い消費者になるための、現代人の必読書。