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『日本エロ本全史』安田理央

 

日本エロ本全史

日本エロ本全史

 

 

おすすめ度: ★★  (3つ星が最高点)

 

 戦後(1946年)から2018年までの主なエロ本100冊を時系列順、1誌につき見開き2ページで、創刊号の表紙やヌード写真、掲載記事をカタログ的に紹介している。

 

 ほとんどの雑誌は、創刊号とその後の紙面が全く違うことが記されている。よしにつけ悪しきにつけ、雑誌は売上がすべてであり、読者に受けいれられる紙面作りが至上命題であるため、変貌を余儀なくされる。

 

 雑誌が変貌していくもう一つの要因は、猥褻写真をめぐる警察の取り締まりやコンビニ販売の有無にかかわる。編集者の逮捕により雑誌が休刊したり内容を変更せざるえなくなる。また、コンビニで取り扱ってもらえるかどうかによって、雑誌の販売部数が大きく左右される。コンビニで販売できなくなったエロ本は否応なく休刊に追い込まれるからだ。

 

 エロ本がエロだけではなく、サブカルチャー誌としても重要な位置を占めていたことは驚きだった。ヌード写真さえ載せていれば、少数の読者にしか受けそうにないマイナー記事や反社会的でアナーキーな記事さえ掲載することもできた。主流ではない、もうひとつの若者文化を育む場所を提供していたといえる。

 

 著者はエロ本の編集者として30誌もの編集に携わり、AV監督やAV男優としても活躍した経歴を持つ。著者による「エロ本私史」は個人史であると同時に、1980年代~2010年代のエロ業界の通史にもなっており興味深い。インターネットの普及によって、半世紀以上続いたエロ本の歴史が終焉を迎えようとしている。

 

 本書を読んで感慨にふけった。社会現象となった女子大生ブーム、おニャン子クラブブルセラ、コギャルの流行は、現在、その痕跡すら残っていない。あらゆる風俗はあっというまに隆盛し、あっというまに衰退し、跡形もなくなってしまう。

 

 昭和から平成にかけての性風俗及びサブカルチャーを語るうえで欠かせない資料的価値満載の一冊。